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【連作コラム 見上げればドコモ尻(2)】液晶クリーナー

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ドコモダケ コラム

部屋の中央には液晶クリーナーがぶら下がっている。中央と言うより中心のほうがしっくりくるかもしれない。この四角い部屋に対角線をひいたら全ての線が交わる場所――に液晶クリーナーが浮かんでいる。

蛍光灯のヒモの先に括りつけられた小さなドコモダケ。10年以上前、ケータイを機種変更した際にノベルティとしてもらって以来、部屋の中心がかつてのNTTドコモのマスコットキャラクターの居場所となっている。愛らしい姿のキノコ型マスコットのお尻はケータイを拭ける液晶クリーナーになっていて、ドコモダケもお尻にそんな機能を持たせられるとは思ってもいなかっただろうが、その無垢な顔つきからはどう思ったかうかがい知ることはできない。(ドコモダケからしたら、お尻のクリーナー部分でケータイを拭くのは「拭いてあげている」のかそれとも「撫でられている」のか……)

ノベルティ。
その言葉の意味を正確には理解していないけれど、ノベルティ≒なんか貰える物だと思っている。「〇千円以上お買い上げの方にオリジナルノベルティプレゼント!」という手法が使われ始めたのはいつからかわからないが、もともとオマケだったノベルティは(〇円以上買った者だけが得られると)ハードルを設定されてまで手に入れるという、オマケからいつの間にか「どうしてもゲットするぜ!」と遮二無二で手に入れる物に変化していた。そんなこともある。

ケータイの液晶クリーナーはノベルティの定番アイテムの一つだった。片面がプニプニの樹脂素材で、もう片面が液晶クリーナーになっている小型の物をもらったり見かけたりした人はけっこういるんじゃないか(年齢によるかもしれないが)。スマホの普及と関係しているのかどうか、いつからか液晶クリーナーのノベルティを見かけることは少なくなった。(ノベルティとは関係ないけど、おみやげ屋さんの三角タペストリーや目玉だけキラキラの石をした骸骨のキーホルダーとか「何のためにあるの?」とか「何に役立つの」と冷めてしまった瞬間から淘汰されていったのだろう、と思う)

ノベルティ≒なんか貰える物。
アメニティになると、その意味はさらに曖昧になる。アメニティはホテルや旅館などに備えてある使用可能なアイテム(シャンプーや髭剃りなど)という認識でいる。「アメニティが充実」とは聞くが、ノベルティのようにグッズとしてゲットするものとは違うみたいだ。

部屋の中心には液晶クリーナーがぶら下がっている。蛍光灯のヒモに括りつけられたドコモダケ。そのお尻の部分――かつて誰かのアイデアによって、ケータイの液晶クリーナー機能が付与されたお尻――でスマホの画面を拭ってみる。

スマホの液晶とドコモダケのお尻が触れあう音は微かな響きを帯びてすぐに消えていった。

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