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【本】大前粟生『おもろい以外いらんねん』感想

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『おもろい以外いらんねん』は≪お笑いコンビ〈馬場リッチバルコニー〉が解散するまでの話。≫の青春小説です。
カッコ内は私が読み終わった日付です。

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■大前粟生『おもろい以外いらんねん』
(2021/4/8)
ちょっとすごいものを読んでしまった感覚。感性、センス。

ただ、内心を言葉というカタチにして話す主人公の咲太とユウキくんが「合わない」人はいそうだが。あるいは「イタい」と言って避ける人とか。で、その「イタい」って言って避けるのと似ているような気もするのが、滝場という登場人物。滝場はそういう内面とか自分自身(という存在の有無も含めて)に目を向けず、ただただおどける。

滝場のおどける(関西の芸人さんがたまに言う”ちょける”)行為は他者のイジりへと向かい、人を傷つける・不快にしてしまう。

滝場との漫才コンビ〈アジサイ〉を中止した咲太は、若手芸人として活動する滝場とユウキくんのコンビ〈馬場リッチバルコニー〉を見る。舞台、オンライン配信、CM、テレビ。画面を通じて見る側(の人)、が描かれているのがイマっぽい。

一般的に笑うことは良いこと、とされている(お笑いなどがおもろい、という意味での笑い)。笑いを生み出す・つくりだす側の辛苦(Think)、笑いが発生している現場で起きていること(作中でも言及される最大公約数的な笑いとか、誰かが傷つく・損なわれる上で生まれてしまう笑いなど)が丁寧に書かれている点だけでも、この作品はスゴい。

ラスト、咲太と滝場とユウキくんは10年ぶりに3人で会う。高校生のころに〈アジサイ〉と〈馬場リッチバルコニー〉が漫才をやっていた公園で。

≪「楽しいなあ」「素朴!」「ほんま。楽しいな」「いやおれも楽しいわ!」≫
≪おもろい以外いらんねん≫と言っていた人間が、それぞれの時間や経験や道程を通して見つけた”楽しい”。3人がこの後どうなるのか、著者の書いた文字が印刷された頁に向かいあいながら色々と考えてみたい。

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