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【コラム 普通】体育祭ウラの逃走劇

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ドンドンドンドンドンドンドンドン
「お前ら、そんなトコ入って!ふざけるのもいい加減にしろよ!出てこい!早く」
高校の外トイレに響く音。
何度も叩かれるドア。先生の怒声。
ドンドンドンドンドンドンドンドン
隣の個室のドアが叩かれる。
「ふざけるな!早く開けて出てこい!」
(隣にいる浜ちゃんは大丈夫かな? どうしてこんなことになってしまったんだろう? ボクは普通の生徒なのに……)

――5分ほど前
浜ちゃんとボクは、校庭に面した校舎の出入口で体育祭が終わりを迎えるのを見ていた。

体育祭に参加しない生徒はボクたちの他にもいた。5~6人くらいの見ているだけの人たち。
良い子悪い子普通の子。
学業は優秀だけど、体育には消極的な女子。団体行動や全体競技が苦手な、狼タイプの男子。
(不良の人たちには体育祭みたいな行事でとことん懸命に参加する人もいれば、その輪には決して加わらない人もいる。後者の人たちには、冷めた眼差しが似合う)
浜ちゃんとボクは普通の子。ただメンドクサイってだけで、体育祭に参加しなかった。
良い子も悪い子も普通の子も、制服を着たままそれぞれ座って話したり、体育祭が繰り広げられる校庭を眺めたりしていた。

体育祭の競技が全て終わった。残すは結果発表と表彰の閉会式のみ。参加していた生徒全員が待機場所に列を組んで並び始める。
派手な法被を羽織った応援団の子。日焼けして泥だらけの子。急にロンダートを披露して目立つ子。だるそうにちんたら歩く子。前の人について行くだけの子。下を向いたままぼんやりとした子。
校庭にも、色んな人たちがいる。
良い子も悪い子も普通の子も、それぞれが思い思いに歩きつつ、閉会式のために列を組んでいく。

「君たちも、最後くらいは参加しなさい」
校庭にいた一人の教師がボクたちのいる校舎に向かって歩いて来た。授業を教わったことはない、あまり知らない先生。

ボクは周囲を見まわした。
悪い子の人たちは、いつの間にかいなくなっていた。さすが狼、危機回避能力が高い。
良い子の人たちは、少し慌てつつ校舎の中に入っていった。外から内へ。教室に避難。
普通の子である浜ちゃんとボクはどうする?
「おい!閉会式ぐらい出たらどうなんだ」そう言いながら先生は少しずつ迫ってくる。

▶にげる
浜ちゃんとボクは走りだした。
先生から逃げるようにコンクリートの中庭へ。中庭を抜けて、ピロティのほうへ。
「おい!何やってんだ!ふざけるな!」先生は走ってボクたちを追いかけてくる。
(どうしてあんな必死になって、追いかけて来るんだろう?)

浜ちゃんとボクは外トイレに入った。2つある個室に別れて入り、カギを閉める。
乱れた呼吸を静めようと努める。
先生の足音がトイレへと近づいてくる。
(ああ……終わったな)

ドンドンドンドンドンドンドンドン
「お前ら、ふざけるなよ!」
「そんなトコ入ってないで、出てきなさい!」
「いい加減にしろよ!」
「早く出てこい!」

浜ちゃんとボクはほとんど同時にトイレのドアを開けた。
目の前に立つ先生は、顔を真っ赤にして立っている。
「お前らさあ、そんなんで恥ずかしくないのか。さっさと校庭行って並んでこい!」
走った勢いでメガネのずれた先生に諭され、ボクたちは校庭へと歩いていく。

校庭には、閉会式を待つ生徒全員が並んでいた。浜ちゃんとボクは校庭の端っこを歩いていく。再び逃げたりしないよう、先生も後ろからついてくる。
侮蔑、哄笑、憤り、無感情。大きな集団の中から発せられる視線を感じつつ、ボクたちは歩いていき、集団の端っこからさらに少し離れたところで腰をおろした。
体育祭に参加した生徒たちの色々な目が、お縄になったボクたちを見つめていた。

(どこでミスった?)
普通の子が普通でない行動をとると、碌なことがない。
制服についた砂埃を払いつつ、ボクたちは体育祭の閉会式が終わるのを待っていた。

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